とりあえず錦織絡めてPV稼いじゃお的な記事はどうかと思う

錦織がマイアミで初戦敗退した。

勝ったり、負けたりが常のATPツアーにおいてはそんなに驚くべきこととは思えないが、BIG4+一部のTOP選手でGS、MSはもちろん500も250ですらほぼ独占していたシーズンを知る人からするとショッキングかもしれない。

 

そこに乗じてショッキングなタイトルつけて、煽るような記事も見受けられる。

「感覚はよかった」のに2回戦負け。頭をよぎる錦織の年齢問題 神 仁司

ttps://sportiva.shueisha.co.jp/clm/otherballgame/tennis/2019/03/24/2_split/

 

アクセス数稼ぎに手を貸すつもりは毛頭ないがまったく腹立たしい。

 

錦織がプレーについてあれこれ言われるのは仕方ない。プロとはそういうものである。しかしながら、評論家があれこれと上から目線でバッサバッサと切るのは大いに違和感がある。同じプロの土俵だ。批判するならそれなりの根拠があってしかるべきで、それがないなら同じようにボロクソ叩かれるべきではないのか。言葉は汚いが、うんちみたいな記事や解説を量産する連中は自己の無責任な放言にどれだけの重みを担保しているのだろうか。さらに質の悪いことに、彼らには肩書がある場合がほとんどで、国内テニス雑誌の人材不足に目を覆いたくなる気持ちでいっぱいである。秋山、武田、神。この他にクルム伊達さんのため息問題で本当にツアー追っかけているのか疑わしい、聞いたことないライターも参戦してくるものだからもはやこの業界はカオスである。

 

話がそれた。ここで言いたいのはプロである以上、無責任ひりだし糞記事はズタボロにされるべきである。ツアーにあてはめるなら、それこそトミッチや無気力キリオスもっといえばクレイジーダニと見まごうような記事である。

 

特に無責任なのは妄想からプレーを批評する以下である。

「錦織の武器のひとつである細かく素早いフットワークが影を潜め、初動が鈍いためポジションに入るのが1~2歩遅れ、グラウンドストロークでのミスが早かった。特に、一番の武器であるはずのフォアハンドストロークは下半身のパワーを十分に生かしきれず、上半身だけの鈍いスイングになって、錦織らしからぬミスが多発した。錦織は風の影響を指摘したが、そこまで強風ではなかったし、条件はラヨビッチも同じだった」

 

もちろんスポーツにおいてすべてを客観的データに当てはめることはできない、主観的評価がすごく大事であることはわかってはいる。

 

そのうえで、である。

 

細かく素早いフットワークが影を潜めた、とはどこから来ているのか。見ていたらわかるでしょ?そんなのもわからないの?で反論を封殺しがちであるが、ここは大いに説明していただく必要がある。

連戦で疲労が出てくると足は重くなるものである。春の北米MSはドローサイズがでかいのが二つ続くのでコンディションの調整が難しくそれらを加味すれば錦織のフットワークに特別問題あるようには思えなかった。

というか、細かく素早いフットワークは基本的に押しているストロークでなければ使えないものではないのか。ラリー中には大股のレンジの広いフットワークでいかに短い時間でポジションとれるかが重要であり(日本の論文でラリー中にプロがとる歩数は3,4歩が最多となっていたはずだ)、ラリーで押し込んで、相手がラケットを前に振れなくなると、ペースのないボールがきて、そこで初めて細かいフットワークが効いてくる。正確に言えばクロス打ち合いで展開が硬直した時も細かく調整している印象があるが、数字に反映されていないので、数が多くないものと思われる。

同論文で幅の大きいステップが多用される理由として、あえて歩数を多く刻むような時間的余裕はないため必然的に大股になるのではと考察していたはずだ。

 

さらに、ポジションに入るのが1,2歩遅れているらしい。どうやってその数字を算出したのかよくわからない。もしその話が本当なら先の論文と照らし合わせると錦織は1,2歩しか動けていないことになる。ボレストでもやっていたのかな?

 

初動が鈍いともあるが、当然この試合のリアクションタイムはとっているのだろうか?

意地悪で言っているのではない。まったくの余談であるが、これは全豪OPでオーストラリアの協会が実際に集めて、リターンのリアクションタイムを開示している。ちなみに錦織はリアクションタイム、移動速度ともに(意外にも)平均よりやや上程度だったはず。

グランドスラムを自国開催するメリットはすさまじく、フォアハンド、バックハンドほかの分析項目についてもかなり詳細にデータを取られている。

そのような数字的な根拠がないのであれば、それはもう妄想である。

 

さて、ここで注目するのが、“フォアハンドストロークは下半身のパワーを十分に生かしきれず、上半身だけの鈍いスイングになって、錦織らしからぬミスが多発したという部分である。”という部分である。そもそもフォアハンドのラケットスピードの70%は上半身で生成される(英語論文)。この点から見ても鈍いという表現は疑問である。また、この日の錦織はスピンレートとしてフォアストロークは50rps程度を維持しており、ツアー中のなかで特別悪いものではない。錦織本人も試合後の会見でIWの時よりもボールはよく飛び落ちていたと話しており、(負け惜しみかもしれないが)手応えがない、ひどい試合というイメージではない。ミスが多かったことは疑いようがないが、時折錦織はTOP選手にあるまじき凡ミスを積む選手である。フリーポイントを大量に明け渡しても、最後には入ってくるというふてぶてしさと、実際にねじ込んできて超面白いラリーを展開してくれるから錦織の試合は面白いのではないか。今回は最後まで局面を打開するほどには至らなかったが、最終ゲーム(結局ブレークされて落とすあれである)はヤケクソバカ打ちハードヒットの雨あられがコート内に収まっていたではないか。

打ちすぎてばてた点はご愛敬である。多少かわいげある方が魅力的でしょ?

無敵艦隊時代のジョコビッチはあんまり人気なかったでしょ?(もちろんフェデナダが人気すぎだとか、出身の問題であったり様々な要因によるものだが)

 

上で書いたような自分の試合評価も多くは主観的評価から来ている。だからそれが本当に事実を正しく記述できているかどうかはわからない。

例えば、ばてたと評したが、実際には風向きが変わってスイングしにくい弾みになったのかもしれないし、フェルトが飛びすぎて合わないボールが来るようになったのかもしれない。そもそも客観的にスイングスピードやボールスピード、スピンレートが落ちたのかどうかはわからない。

 

このような主観的評価と客観的事実が食い違う例を挙げよう。テニスコーチもストリンガーもプロもボールの飛びが悪いならガットテンションを落として、逆に飛びすぎるなら固くしてということは未だに日本全国そこらじゅうで言われていることだろう。

しかし、研究結果としてガットテンションはボールの飛距離に影響を与えない。(確か有意差なしどころか関連自体ほぼないというものだったはず)。しかし、実際にボールの飛びが変だとガットのテンションはいじる。これは経験則でそんなにおかしくない。

種を明かすと、ガットのテンションはボールの打ち出し角度に影響を与えるようである。固いと打球角度は下がり緩いと上がるそうである。これは主観がバイアスとなってしまう面白い例だと僕は思っている。

別な研究では打球音をマスクした場合、ガットテンションの違いはほとんどわからないそうだ。研究対象者は海外のセミプロなのでテニスが下手だからとか、テニス歴が短いからということではない。なんとびっくり、15ポンドくらいまでのガットテンションの違いすら我々は認識できていないのである。

しかし、自分のようなアマチュアプレーヤーでさえ、寒くなってきたときに、ガットが固い感じというのは確実にある。そのほとんどは音の違いなのだろうか。まったく不思議である。不思議ではあるが、ピュアドライブを何となく嫌がる一定の層がいるというのも納得できる気がする。(素晴らしいラケットだけど、ちょっと金属音っぽい独特の打球感があるのだ)

 

いずれにせよ、このふたつの研究を統合して導き出される仮説としては、打球音と自分のイメージしたボール角度と違うと、テニスプレーヤーはひどく困惑するようである。考えてみればボールの飛び一つとっても相手のボールの勢い、質によってもずいぶんばらける気がする。(これは根拠がないのだが)

 

 

不用心に断定する記事がどれだけ罪深いかおわかりいただけただろうか?

無料記事だから手を抜いているとしたら、ライターとしての資質に欠けるし、このような客観的評価ができることを知らない、ないし気に留めていないようであれば、テニスに対する基本的知識や愛情が欠落していると言わざるを得ない。

 

だから、テニスの記事は内田さんのように優秀なライターに集約してくれればいい。なんなら山口さん、カジュアルな記事ならダバディさんでもいい。

 

 

テニスというのは本当に面白いスポーツで、今のところ「正解」への道は人それぞれという点がより魅力的たらしめている。

サーブ打って、おしまい。とか、とにかく強いボールを打ち続ける、とか、そりゃ強いのわかるけど、みんながみんなそれならテニスは面白くなくなる。このへんは個人により考え方も違うが、やっぱり色んなプレーヤーがいるから楽しいのでは。

 

みんな違って、みんないい。