ウィルスのことは(まだ)よくわからない

エビデンスとは何だろう?

https://note.com/yo_tsu_ya_3/n/na4fb2c05ff55

医療の現場からというnoteが流行っているようだ。
自称看護師の方の悲痛な叫びが伝わってくる。

このサイトの信憑性はともかく、危ない認識なのではないかと思う部分がある。
エビデンスレベルの認識である。
著作権はともかく、引用させていただこう。

以下引用
『医者だってできるものならPCR検査をして「ほら、大丈夫だった。症状がないなら働いていいよ」と太鼓判を押したいだろう。それができないのである。

おかしくないか??』
以上引用

この新しいウィルスについてはエビデンスは周回遅れで上がってきくる。
エビデンスレベルの高いレビューやらそこからのガイドラインは必ず遅れてやってくる。

その上で、今わかっていることとして、残念ながらPCR検査の感度は高くない。(肺CTの方が高いかもしれない)

何が問題かというと偽陰性の人が出てくるリスクが高いのではないかと疑問が残る。


専門用語を使って賢ぶって申し訳ない。つまりはこうだ。

感染しているAくんBくんCくんが検査を受けたとしよう。検査でAくんBくんを見つけることができた。良かった良かった。
しかしながらCくんを陰性=感染していないと判断されてしまった。これはしょうがない。検査には限界がある。
Cくんのように実際には感染しているにもかかわらず検査で見逃されてしまう人は偽陰性と呼ばれる。
検査の特性として、AくんBくんのようにどれくらい見抜けるかという割合を感度と定義している。

もっと正確な定義は統計やら衛生やらで勉強していただくとして、上のケースでの感度は66%くらいである。ポツポツ出てくる報告では新型コロナウィルスに対するPCRの感度は70%くらいである。

PCR陰性で症状がないから働いていいよとは言いにくい状況ではないか。
まさにこのケースが象徴的だ。

以下引用
『交通事故で救急搬送されてきた患者のCTを取ったら「新型コロナウイルス肺炎像」が写っていた。
PCR検査を行ったが陰性だったので、感染管理部いわく通常通りの対応で、とのことだ。
麻酔科医師が何も言わずに陰圧換気手術室(感染症対応手術ができる部屋)をオーダーした。

N95マスクに防御シールドを身に着け完全防御態勢の麻酔科医師。
通常通りでいいと言われたので、通常通り入室する外科医。
どうしていいか分からず、とりあえずシールドだけ身に着けてみる看護師(N95は貴重)』
以上引用

これについては、交通事故からの救急搬送なので難しい判断でやむを得ない部分もあると思う。
かなり偽陰性が疑われるため延期できるなら延期した方が良いが、延期しなかったのはそういう判断だろう。


また、サージカルマスクやN95マスクについても気を付けなければならないことがある。
やや本筋から外れるがインフルエンザウィルスに対しては医療従事者と患者家族に限り効果は認められたが、一般人がつける意味は(過去のマスク着用意識では)ほとんどない。
これはレビューがいくつか存在しており、WHOが推奨していなかった理由であろう。


さて、救急搬送されたあとどのような処置をしたか定かではない。しかしもし新型コロナウィルスがエアロゾル感染するとするならば(まだ結論出ていないはずだ)悲観的な見方もできる。確かサージカルマスクもN95も有用性で有意差無かったはずだ。レビューもサンプル数少ない報告が多いため出せないのではなかろうか。
これは厚労省ガイドラインから逆行するため、決して推奨しているわけではない。(サージカルマスクで術場にいけと主張したいわけではない)

あくまでも、まだ、公言出来る状況ではないというだけだ。エビデンスがついてくれば、当然ガイドラインは修正されるし、それは手のひら返しとは言わない。
逆にエビデンスがない以上、可能性はかなり高いのは承知しているが万一の可能性があるためはっきりしたことは言えない。

例えば新型コロナウィルスにおいてエアロゾル感染が起こるとはまだ断定していないのではないか。(ただし起こる前提で対策は進んでいるだろう)
ここが難しいところで、起こらないとも言っていないはずだ。あらゆる可能性を否定せず対応しなければならないのだ。
なんとも歯切れの悪い態度である。エビデンスなしでも、それっぽいことをさも絶対正解のように威勢良く発言するテレビコメンテーターの方がよっぽど頼りがいがある。それでも医療者はこの態度を崩してはいけない。


医療行為は基本的にはすべて犯罪にあたる。だからこその免許制度なのだが、必ずリスクとベネフィットを天秤にかけて冷静に判断して欲しい。
休みなし激務道具なしストレスフルな状況下で冷静な判断力を保てというのは、生身で空を飛べというのと同じようなことを要求しているのは百も承知だが、どうかどうか医療従事者は冷静さを失わないで。


ちなみに専門家の言葉はエビデンスレベルでは最下層である。誰が言ったかよりも何を基準に発言したかが大事なのだ。
エビデンスレベルはピラミッドになっていて、下から専門家の言葉、仮説、次いで症例報告、サンプル数大きくしたレポート、ランダム化比較試験となっている。
医療系のガイドラインには必ずエビデンスレベルが附記されているはずだ。時間はかかるがこれにより全世界、色々な考えを持っている医療従事者が同じ方向に足並み揃えることが出来るのだ。
残念なことに、中国を批判するなといったその口でコロナ四天王を発表するような、そもそもの資質を疑われるような人間も一定数出てくるが。


今は大変な時期である。8割削減おじさんは教授だから、専門家グループだから信頼されているのではない。緻密な数理モデルから8割という数字を出しているのだ。

政治経済については門外漢なので、政府の対応を評価するつもりはないのだが、この数字を値切り交渉するかのごとく6割にならんかとか、最低7割とか、それをするなら同じように根拠を出して欲しいものである。

 結局安易な政権批判になってしまっていたら申し訳ない。そこは私の本意ではなく、多少の嫌味であって少なくともこの記事では誰かを本気で批判しているわけではない。テドロス以外は。