激辛グルメクラブがサークルクラッシュを食らった一例

辛い食べ物というのはどうしようもなく惹き付ける。

カレー屋さんを思い浮かべてほしい。そこには色んな美味しそうなメニューがあるはずだ。そしてこんな表記はないだろうか?"お好みの辛さを選んでください"

他の外食産業において、ここまで味を細かく指定できることは珍しいのでは。ラーメン屋さんで濃い目、薄目くらいはオーダーできるかもれない。でも塩味5、旨味7の酸味3でお願いしますとオーダーする人はまず見かけないはずだ。

今の科学によると、辛味というのは味覚受容体で刺激を感じているわけではなく、痛覚や温度覚の刺激ということになっている。そのため五大基本味覚には含まれないとのことだ。

さて、辛味というのは時としてエンタメになる。我々はその昔、6人程度で連れ立っては激辛を食べてみるという儀式を繰り返していた。何が楽しいのか、翌日には口から肛門まで鈍痛を抱える羽目になっても、暫く激辛をやっていないと禁断症状が出てくるから不思議なものである。
しかしこの宗教団体は辛さに耐性があるのは一人だけで、後は一般人だけしかいなかった。我々の王はCoCo壱で迷わず10辛オーダーする猛者だったが、私含む他のメンバーはそのおこぼれを掬って味見してはヤバいヤバいと囃し立てることしかできなかった。不思議なことに絶対に自分一人では注文しない辛さも、味見~ちょい食べ程度なら皆進んでトライした。辛いのが苦手な人間さえ、このエンタメの楽しさを共有していたように思う。

サークルクラッシャーという言葉がある。Wikipediaにも項目があり、もはやネットミームを飛び出してやや一般用語寄りのスラングになっていると思う。基本的には楽しくやっているところに色恋沙汰を持ち込んで破滅させるという定義で通じると思う。今回我々は色恋抜きにしてもクラッシュされる一例を経験したので報告する。

我々の儀式にある時辛いものに目がないという女性が参加することになった。王以外はいなくても敢行されるため全会出席している自信はなく、はっきりとはわからないが、時折ゲスト参加はあったものの女性の参加は初めてだった気がする。儀式の性質上"回し食べ"のような形になるため、異性が混じるのはなぁと思っていた。

さて、結論であるがこの女性、滅茶苦茶辛味耐性が強かった。
我々の王とて最大の辛味にたいしては汗かきながら艱難辛苦を乗り越える様であり、今にして思うとそれがエンタメに繋がっていたのだが、かの化け物は平然とペロリと完食しやがる。我々がきゃあきゃあ、多少の無理をして、チームワークの一体感すら覚えながらようやっとやっつける横で、あまり水も飲まずにしれっと平らげられると盛り下がった。辛い痛い以外の感想が無いなか、旨味がどーのこーの言われてもこまる。王ですら味覚は麻痺してるのだ。
我々の王への信仰心は少しも揺るいではいないのだが、激辛食べようサークルは自然に瓦解した。世の中の美味しいものはたくさんある。ラーメン食べようサークルに看板をすげ替え、その後も外食そのものは続いたが、あれだけの熱気ははらんでいなかったように思う。メンバーもより流動的になり、王という存在もなくなった。強いて言えば足がある人になるのだが、あの激辛で結ばれたような絆はなく、そのうち通常の仲良し飲み会やらに分散されていった。

振り返ってみるとその女性と激辛食べ歩きを出来るのは王くらいなものだったが、王には当時彼女がいたためそのような発展はせず、我々は色恋沙汰抜きにしてサークルクラッシュをくらってしまった。インカレテニスサークルにおいて高校までバリバリやっていたガチ勢がいるという謎現象を知っているが、あれで蹂躙されるのはこんな感覚なのかとも思う。インカレに出てくるレベルがインカレサークルにいるとはこれ如何に。

最近、激辛課長という漫画を見るたびに懐かしい気持ちになる。我々が経験できなかった色恋を含みつつ、火曜日にコミックDAYSで無料更新されるので、皆見てみよう(ダイマ)。あとイブニングで本誌連載されてるのが最終回を迎えたのかな?さみしい。